アン・ハサウェイ映画「シンクロナイズドモンスター」がメタフォリックな話。
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11月3日(金)に公開されるアン・ハサウェイ主演の『シンクロナイズドモンスター』の試写会に行ってきました。
映画のジャンルを曲げまくったストーリーであえてジャンルをつけるならば、「怪獣ロマコメサスペンス」!?
アン・ハサウェイが演じるグロリアは、職ナシ、家ナシ、彼氏ナシというダメダメ女。NYCのWebライターだったのに、ちょっとしたジョークで書いた記事が炎上してリストラにあってしまい、それから酒浸りの毎日。同棲していた彼氏のティム(ダン・スティーヴンス)に愛想をつかれ家から追い出される始末。行く所のないグローリーは、しぶしぶ田舎に帰ってバーのウェイトレスとして働き始めます。そんなときに、突如として韓国・ソウルに現れた怪獣。グロリアは怪獣の秘密に気づき……。
突拍子もない物語なんだけど、登場人物や部屋の様子などにメタファーがレイヤードされています。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、まず、グロリアのもつ”輝かしい”という名前の意味、そしてグロリアを助ける同級生のオスカー(ジェイソン・サダイキス)のもつ”アイルランドの伝説に登場する万能の戦士”という名前の意味が、どちらかというと人生負け犬感たっぷりの二人のキャラクターと真逆なのがアイロニック。
オスカー、ティム、オスカーの部屋、怪獣、存在感のないオスカーの友達、ラストのバトルがなにを示唆しているのか考えながら観るととてもおもしろい! ひょっとしたら観る人によって、メタファーの受け取り方が変わってくるのかもしれません。
また、製作総指揮者がアン・ハサウェイというのも彼女の並々ならぬ意欲を感じます。というのも、ネットで炎上したグロリアと同じく、アン・ハサウェイも『レ・ミゼラブル』でアカデミー助演女優賞を受賞したあたりから、ことあるごとにネットでバッシングされていたから。受賞スピーチがわざとらしい、優等生的発言がウザい、とかなんとか。
10年ぐらい前にアン・ハサウェイをNYのレストランで見かけたことがありますが、「こんな天使みたいな人がいるのか!」と心の底から驚きました。とにかく細くて真っ白で顔の半分が目!? 全身からキラキラがほとばしってそれはそれは眩しかったこと! しかも連れている男はお金もちそうな超イケメンだし!(その彼は当時付き合っていたラファエロ・フォリエリで詐欺罪で逮捕されちゃったけど)
アメリカの名門ヴァッサーカレッジに通うぐらい知性が高くお金もちで、キレイで演技も上手いし(後にNYUにトランスファーしたみたいですが)、ミュージカルもプロデューサー業もこなし、結婚して子供もいるなんて、確かにキラキラ女子すぎる。
しかし、ナタリー・ポートマンも同じくスーパー女子だけど、なぜアンのほうが叩かれるんだろう? ナタリーのようにハーバードじゃなくって、元セブンシスターズ(家柄がよくて優秀な子女が入学する女子大7校。ヴァッサー大は共学化)を選ぶところがキラキラ女子って感じで鼻につくのだろうか。
余談ですが、私がフィラデルフィアに住んでいたときに、セブンシスターズのブリンマーカレッジ(津田梅子が留学したところっす)に通っている女の子を何人か知っていたけれど、実家はお金持ちなのにわざわざ貧乏くさい格好をする子が多かった。それは"控えめ”というのじゃなくて、自分たちがエスタブリッシュメントに属していることに少し反発しているフェミニストという風に私は捉えていました。「キラキラ組で一生生きていくのは自分でも確信しているけれど、面と向かってキラキラするのは恥ずかしい」というような。ちょっとワザとらしい。え? 庶民のひがみ? そうかもしれません(笑)。
とにかくこの映画は、アンが自分自身を投影してSNSの世界にFワードを突きつけているようにも感じられたりして(笑)。
いかようにも読み取れる本作。男性社会から女性自身にパワーを取りもどすフェミニスト映画としても楽しめるんじゃないかな。女性の自立、再生、SNS、こういったシリアスなテーマを、サスペンスフルでユーモラスな怪獣映画に仕上げちゃうところにナチョ・ビガロンド監督の力量を感じました。おすすめです!